私が担当しているページに月に1回、あるお笑い芸人のコラムを載せている。
頼んだころよりかなり有名になり、反響もそこそこある。
手紙やメールもくる。
先日、ある母親から手紙がきた。
息子の小学校の卒業式に、サプライズゲストとして来てほしいというお願いだった。
とりあえず小学校に電話をして、手紙の主旨を伝えた。
数日後、職員会議の結果として既に式次第が決まっているから無理だと返事があった。
保護者には学校が伝えてくれるとのこと。
これで一安心。
そう思っていた。
そしたら今日、先輩から大きな封筒を渡された。
「例のお母さんから。今度は色紙が入ってたよ」。
先輩がいう通り、色紙とペン、色紙の見本、プレゼント(折り紙と思われる)、手紙が入っていた。
芸人さん宛てと、担当者、つまり私宛て。
私宛ての手紙を開いた。
「学校からの冷たい態度にがっかりされたと思います。でも私はあきらめません」。
私自身は何一つがっかりしてないのだけれど、とりあえずマネージャーさんに電話をした。
無理ならまぁ卒業をテーマにコラムを書いてもらえばいいかと思って。
事の経緯を話すと、マネージャーさんは「サインとメッセージぐらいなら引き受けますよ」と快諾してくれた。
「でも、二度目はないと伝えてください」と釘を刺されたが。
先日の手紙にも、今回同様、「息子の思い出に残るプレゼントがしたい。喜ぶ顔が見たい」と書いてあった。
そりゃそうかもしれない。
でも、私は、あくまで私個人的には、違和感が残る。
中高一貫、大学も姉妹校に進んだ。
友達と「これっきり」になる寂しさは特になかった。
ただ、先生や家族、友達の支えがあったから卒業できたと思った。
高校の卒業式で流した涙は、嬉し泣きに近かった。
高校の卒業式前日、夏時間の電車に乗って(冬になると冬時間っていう時間割で授業開始が遅くなる)、歩いて登校した。
中学の卒業式直前には親友と大喧嘩して、思いの丈を書いた手紙を交換した。
小学校の卒業式の後で、よく遊んだ公園にみんなで行った。
サプライズゲストはいない。
大好きな芸能人からのメッセージも、当然ながら、ない。
それでも、子供は子供の世界の中で、ちゃんと忘れがたい大切な思い出を作れるのだと思う。
そして何より、毎回母が手紙をくれた。
「ありがとう」
「無事に卒業を迎えられて嬉しい」
「あなたの母親で良かった」
いつもそこには、普段じゃ恥ずかしくて言えないような言葉が書いてあって、卒業式に行く前から嬉しさのあまり泣きそうだった。
家族みんなが好きな芸人からのメッセージより、お母さんが心を込めて書く手紙のほうが、息子さんは喜ぶんじゃないだろうか。
愛情は伝わるんじゃないだろうか。
子供がいない私が言っても、あんまり説得力はないだろうから、もちろん、あえてご本人には言わないけど。
私の考えは夢見がちなのかもしれない。
古いのかもしれない。
でも、あの時もらった母親からの手紙は今も、私の心の支えだし、大切な思い出だ。